第0章で「委託する覚悟」を決めました。次に必要なのは、委託先を知ることです。士業に仕事を頼むとき、税理士と弁護士の違いを知らずに依頼する人はいません。AIも同じです。この章では、主要なAIの特徴と使い分け、料金の考え方、そして会社員として絶対に守るべき安全の線引きを身につけます。章の最後には、AIの答えが事実と違うことがあるという限界と、それを確かめる手順を、あなた自身の手で体験してもらいます。
🎬 第1章 冒頭動画
この節で分かること:代表的な生成AIの「性格の違い」。スペック表ではなく、使い分けの感覚をつかみます。
2026年現在、個人が使える生成AIの代表格は、ChatGPT(OpenAI)、Claude(Anthropic)、Gemini(Google)、Copilot(Microsoft)の4つです。細かい機能や性能は数ヶ月単位で入れ替わるので、この教材では変わりにくい「出自による性格」で捉えます。
大事なのは優劣ではありません。司令塔は、委託先の得意分野で使い分けます。私自身、用途によって複数のAIを使います。ただし、学ぶ段階では話が別です。次の節で説明する理由から、このコースでは1つに絞って深く使い込みます。
%% title: 4つのAIの性格マップ(傾向)
quadrantChart
x-axis "情報量の多さ" --> "文章・思考の深さ"
y-axis "特定環境との連携" --> "汎用"
"ChatGPT(多機能型)": [0.3, 0.8]
"Claude(文章・思考型)": [0.82, 0.72]
"Gemini(Google生態系型)": [0.28, 0.25]
"Copilot(Office組み込み型)": [0.55, 0.15](この節の情報は2026年8月時点。AIの世界は変化が速いため、本ポータルでは情報を随時更新します)
この節で分かること:Lifenceの選定理由。「何でもいい」ではなく「これで深く」の設計思想。
結論から言うと、このコースの実習はすべてClaudeで行います。理由は4つです。
理由1: 委託の中核作業に強い。第2章以降であなたがAIに委託するのは、文章・資料・分析・構築です。長い文脈を保ったまま丁寧に考える作業——つまり「大脳の作業機能」の中心部で、Claudeは安定した品質を出します。
理由2: このコース自体がClaudeで作られている。教材本文も、動画も、この学習ポータルの仕組みも、私がClaudeとの協働で制作しました。つまり、あなたはこれから「実物の制作環境」そのもので学びます。講師が使っていない道具を勧める講座と、成果物ごと見せられる講座——どちらを信頼するかは、言うまでもないと思います。
理由3: 学習効率。4つを浅く触るより、1つを深く使い込むほうが、委託の技術は圧倒的に速く身につきます。プロンプト設計の原理(第2章)は一度身につけば他のAIにもそのまま応用できるので、「Claudeで学び、必要に応じて広げる」が最短路です。
理由4: 誠実さの相性。AIの回答の調子は各社で個性があります。Lifenceが顧客対応で大切にする「丁寧かつ直接的」というトーンに、Claudeの文章は近い。あなたが仕事で使う文章の土台になるものだからこそ、ここは相性で選んでいます。
念のため——他のAIを否定する意図はありません。会社でCopilotしか使えない人は、このコースの原理をCopilotで応用して構いません。ただ、実習画面と同じ環境で学べるメリットは大きいので、可能な限りClaudeを用意することを推奨します。
この節で分かること:無料版と有料版の違いの考え方。いくら払うべきかの判断軸。
生成AIの多くは「無料版+月額の有料版」という構成です。まず、このコースの前提を明確にします。
推奨環境: Claudeの有料プラン(月額数千円程度)。無料版でも学習は始められますが、利用回数の制限があり、実習の途中で止まりがちです。第5章の構築編では作業量が増えるため、有料プランを強く推奨します。
「月数千円は高い」と感じた人へ。第0章のワークAを思い出してください。あなたの1週間から委託可能な作業時間は何時間ありましたか。仮に月20時間の作業が委託できるなら、あなたの時給換算でいくらになるでしょう。AIの月額は、人を雇う費用ではなく、自分の時間を買い戻す費用です。この計算を自分の数字でやること自体が、金融スクールLifenceらしい判断の仕方です。
一方で、注意も一つ。AIツールの世界には、高額なツールやセット販売も存在します。このコースの実習は「Claude有料プラン+無料で使えるサービス」だけで完結するように設計してあります。途中で追加の高額ツールが必要になることはありません。もし今後、別のツールを検討する場面が来たら、この節の判断軸——「委託できる時間×自分の時給 > 月額か?」——で評価してください。
この節で分かること:会社員がAIを使う上で、一発アウトになり得る行為と、その回避法。この節だけは暗記レベルで。
ここは、このコースで最も「守り」の節です。AIの委託で成果を出す前に、事故を起こさない線引きを固めます。
絶対ルール1: 会社の機密情報を入力しない。顧客名簿、未公開の売上数字、社外秘の資料、取引先との契約内容——これらをAIに貼り付けるのは、社外のサービスに社内情報を持ち出す行為です。多くの会社で就業規則や情報管理規程に触れます。委託したい文書に機密が含まれる場合は、固有名詞や数字を伏せ字・仮名に置き換えてから渡すのが基本動作です(例:「A社」「売上X円」)。
絶対ルール2: 個人情報を入力しない。自分以外の人の氏名・連絡先・個人が特定できる情報は入れない。自分の情報も、必要最小限に。
絶対ルール3: 会社のAI利用ルールを確認する。会社によっては、利用可能なAIを指定していたり、全面禁止だったりします。就業規則・情報システム部門の通達を一度確認してください。「知らなかった」は通用しません。確認した上で、会社が認める範囲で使う——これも司令塔の責任範囲です。
設定でやるべきこと: 各AIには、入力内容をAIの学習に使わせない設定(オプトアウト)が用意されていることが多いです。仕事で使うアカウントでは、この設定を確認しておきましょう(実演はJ-02動画で行います)。
怖がらせるための節ではありません。線引きさえ守れば、AIは安心して使い倒せます。線を知らないから怖い。線を知れば自由になる——安全教育の本質はこれです。
%% title: 入力してよい情報の判定フロー
flowchart LR
START(["入力しようとしている情報"]) --> Q1{"機密情報?<br/>(社外秘・顧客情報)"}
Q1 -->|"はい"| M1["伏せ字化する or 入力しない"]
Q1 -->|"いいえ"| Q2{"個人情報?<br/>(氏名・連絡先など)"}
Q2 -->|"はい"| M2["原則入力しない"]
Q2 -->|"いいえ"| Q3{"会社ルールで<br/>許可された環境?"}
Q3 -->|"不明"| M3["会社に確認する"]
Q3 -->|"はい"| OK(["委託開始OK"])
style M1 fill:#ffffff,stroke:#E8B04B,stroke-width:3px,color:#0A1124この節で分かること:AIの答えは、確かめるまでは仮説。その理由と確かめる手順を、知識ではなく体験として持つ。
この章の締めくくりに、少し意地悪な実験をします。AIに、わざと間違えさせます。
生成AIには「ハルシネーション」と呼ばれる現象があります。事実と違う内容を、もっともらしく書いてしまうことがある性質です。存在しない本のタイトル、実在しない判例、微妙に違う制度の説明——形式は整っていても、中身が違うことがあります。
なぜ最初にこれを体験してもらうのか。委託先の限界を知らないまま委託を始めるのは、ブレーキの位置を知らずに車を運転するのと同じだからです。そして、この現象は文章で読むより、自分の画面で一度目撃するほうが百倍記憶に残ります。
実験の様子はJ-03動画で見てください。実験してみると、AIの反応は一様ではありません。今回の実演では、Claudeはウェブ検索で確かめた上で『この理論は見当たらない』と答えました——最近のAIは、こうして自分で確かめて見抜くこともあります。しかし、いつもそうとは限りません。検索しないで答える場面、出典や数字を求めた場面、新しい情報や狭い分野の話では、今も事実と違う内容をもっともらしく書くことがあります。だからこの講座では、こう覚えてください。AIの答えは、確かめるまでは仮説です。『AIが確かめてくれた』で終わりにしない。確かめる習慣は人が持ち、確かめる責任は、最後はあなたにあります。
体験したら、思い出してください。だからこそ第0章で「検証眼は手放さない」と決めたのです。検証の技術そのものは第4章でみっちり扱います。この章では、「AIの答えは、確かめるまでは仮説」という感覚と、確かめる最初の手順を、体に入れるところまでで十分です。
委託先の得意と限界、料金の考え方、安全の線引き。これで、委託を始める準備が整いました。次章から、いよいよ司令塔の言語——プロンプト設計に入ります。
🎬 実演01「同じ質問を4つのAIに聞いてみる」
🎬 実演02「Claude導入と初期設定」
🎬 実演03「わざと間違えさせる実験」
J-03の最後は「架空の用語で、試してみましょう」で終わります。架空の用語を聞いてみるのも一つの体験ですが、このワークではその先——実在する情報で、確かめる手順を身につけます。
題材: あなたの仕事・生活で、正確さが大事な情報を1つ選びます(制度・数字・期限など。例: 仕事で使う制度の条件、手続きの提出期限、料金や上限額)。
手順(所要15分)
気づきの問い: AIは自分で確かめていましたか。出典は実在しましたか。あなたが確かめなかったら、どこで間違いに気づけたでしょうか。
第4章のファクトチェック実技では、この手順を「出典を求める → 一次情報と照合する → 新しいチャットで逆から聞く」の3段に広げます。
回答メモ
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新しいAIツールを検討するときの5問
合言葉: 道具は増やすほど強いのではない。使い込むほど強い。
5問・合格基準4問正解・再受験可。合格すると進捗に記録されます。